PANARACER AGXERO TLR 700×30C
予想を裏切られる軽快さ
─ AGXERO TLR 700×30C
内幅25mmのリムに、ようやく決まった30C。パナレーサーの新しいフラッグシップを100km走らせて。
30Cを、ずっと探していた
8LIEN や CRW など、手元にリム内幅25mmというワイドリムのホイールが増えてきました。この内幅のポテンシャルを引き出すなら、やはり「30C」を合わせたい。そう考えて理想のタイヤを探す日々が、少し前まで続いていました。
以前、AGILEST FAST TLRの30Cも試していました。決して悪いタイヤではありません。ただ、実際に走らせてみると、どこか路面に引っかかるような「抵抗感」が拭えず、いろいろと試行錯誤した末に、結局は慣れ親しんだ28Cへと戻っていました。「30Cを選びたい」という機材的な欲求と、実際にペダルを踏んだときのフィーリングが、どうしても噛み合わないままでいたのです。
そんな折に登場したのが、パナレーサーの新しいフラッグシップAGXERO TLRでした。新しい設計のタイヤなら、もう一度30Cに挑戦してみたい。そう思い直して手にしたのが、700×30Cでした。
手に取ると、少し分厚い
箱から出して触れた瞬間、まず感じたのはAGILEST FASTに比べて「少し分厚いな」ということでした。コンパウンドの質感もFASTのようなしなやかさとは異なり、どこか粘り気のある「しっかりとしたゴム感」が前面に出ています。
ここまで分厚いと、重量もそれなりに増しているのだろうと身構えていました。ところが実際に重量計へ載せてみると、思っていたほど重くならず、数グラムの増加にとどまっていました。ここは正直に驚かされた部分です。
あとでカタログを確認したら、AGILEST FAST TLRの30Cが295g、AGXERO TLRの30Cが300g。差は5gでした。手で感じたとおりの数字が、そのまま出ていたことになります。
ビードの上がり具合についても特に癖はなく、すんなりと上がってくれました。このシリーズにはフロアポンプでもビードが上がるように設計された「ビードロック構造」が入っていて、ホイールとの組み合わせで組み付けに手こずるようなストレスはありませんでした。
700×28C 270g / 推奨内圧 MAX 650kPa(94psi)
700×30C 300g / 推奨内圧 MAX 600kPa(87psi)
ケーシング:AX-αコード(0.14mm径の極細コードを高密度に織る)
コンパウンド:ZSG AGILE-X(アジリストのZSGアジャイルをベースに新開発)
サイドウォール:ブラック/アンバーの2種
税込参考価格:9,020円(全サイズ共通)
メーカーの説明によると、コンパウンドの最適化と新しいトレッドパターンによって、AGILESTシリーズ特有の転がりとグリップ性能を維持したまま、耐貫通パンク強度を引き上げたとのこと。社内試験でAGILEST比6%以上の向上、という数字も出ています。この「転がりを保ったまま」という主張が実際どうなのか、自分の脚で確かめたいと考えていました。
予測が、外れた
30Cという太さで、しかも触った感触は少し分厚くゴムっぽい。「走りが重く感じるのではないか」というよくない予想を抱えたまま、テストライドへ走り出しました。
ところが、実際にペダルを回してみると、驚くほど軽快だったのです。少しギアをかけてグイグイと踏み込んでいくと、バイクがそのまま素直に加速していく。踏み出しの重さを感じることもなく、巡航に入ってからの速度維持も非常に心地良いものでした。
30Cはタイヤの外径そのものが大きくなります。大きな外径が転がることで体感速度が底上げされる要素もあるとは思いますが、それだけでは説明がつかないほど、平坦路での進み方が素晴らしいものでした。感覚としては、巡航速度が自然と1km/h〜2km/hほど持ち上げられている印象です。
「分厚いから重くなるはず」「ゴムっぽいから転がりが鈍いはず」「30Cだから抵抗が増えるはず」。走り出す前に立てていたこれらの予想は、結果として嬉しい形で全部外れました。
登りで、重くならない
登坂性能に関しても、タイヤが重荷になる感覚はほとんどありませんでした。いつもの峠でのタイムやパワーメーターの出力ワットを見ても以前と変わらず、終始軽快に登り切ることができました。
28Cから30Cへ、しかも厚みのあるタイヤに変えたのに、登りのタイムが落ちなかった。この事実が、私にとっては大きな意味を持っています。
下りの接地感と、雨
ダウンヒルでの安心感とコーナーリングの扱いやすさ。ここが、今回最も明確な差を感じ取れたポイントでした。
AGILEST FASTは非常にスピードの出るタイヤですが、路面からのインフォメーションがやや薄く、「どこかで滑るのではないか」というかすかな不安が頭をよぎることがありました。それがAGXEROになると、粘りのあるコンパウンドがしっかりと路面を捉える「接地感」があり、扱いやすさが段違いでした。同じ速度でコーナーへ進入しても、アプローチ時の心の余裕が全く変わってきます。
また、雨天時の挙動についても触れておきます。FASTは濡れた路面に入ると滑りやすく、精神的にも緊張を強いられる場面がありました。そこで今回はAGXEROの真価を確かめるべく、あえてウェットコンディションでも試走を行いました。結果としてグリップ力は非常に高く、不安を感じさせる挙動は一切ありませんでした。全天候で信頼して使えると確信できた瞬間です。
荒れた路面での振る舞い
舗装の荒れた路面においては、30Cならではの豊かなエアボリュームが細かい振動を綺麗にいなしてくれます。このあたりの快適性は、タイヤ幅を広げた恩恵がダイレクトに現れる部分だと感じます。
強いて言えば、路面の非常に微細な凹凸に対するコンプライアンス(しなやかさ)という点では、FASTの方がわずかに柔らかいフィーリングを残しています。ただ、これも乗り比べて初めて気づくレベルの微差であり、普段のライドで意識するような悪影響ではありませんでした。
28Cも使ってみた
検証のため、AGXEROの28Cも少しテストしてみました。28Cも非常に好感触だったのですが、ワイドリムに組み合わせた際には、どこかタイヤのプロファイルに頼りなさを感じる部分がありました。30Cにはその頼りなさが一切なく、走りの軽快さにおいても28Cと同等か、それ以上のフィーリングを得られると感じています。
ペダルを回した分だけぐいぐいと進む感覚。登りで重荷にならないのに、平坦で気持ちよく伸びていく。このバランスこそが、ワイドリムに合わせる30Cに求めていた答えそのものでした。
28Cでも十分成立しますが、リム内幅に対してタイヤのプロファイルが少しタイトに感じられることがあります。30Cを選ぶことで理想的な接地感とエアボリュームが得られますが、実測幅が約31mmとなるため、愛車のフレームやフロントフォークのクリアランスは事前によく確認しておくことをおすすめします。
今回のセットアップ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ホイール | 8LIEN L6W(リム内幅25mm) |
| タイヤ | AGXERO TLR 700×30C |
| 実測幅 | 31mm |
| ライダー体重 | 83kg |
| 空気圧 | フロント 4.3bar / リア 4.5bar |
| 走行距離 | 約100km(登り・下り・平坦を含む平均的なコース) |
空気圧に関しては、以前FASTの28Cを使っていた時と同じ数値で揃えてテストしました。ただ、AGXERO TLRの30Cであれば、私の体重でも4.0bar付近まで空気圧を落としても破綻しないと感じます。ライドの快適性や振動吸収をより高めたい方は、このあたりの圧力を試してみる価値がありそうです。もちろん、低圧側に振るとコーナーでのタイヤのヨレ感も変わってきますので、そこは走りながら自分に合うポイントを詰めていく部分になります。
デメリットの話が、難しい
1本9,020円(税込)という価格を考えると、この走行性能と安心感に対して目立ったデメリットを挙げるのはなかなか難しいというのが正直なところです。同じ30CでAGILEST FAST TLRが12,540円ですから、3,500円ほど安くて、重さの差は5gということになります。
絶対的な軽さや、瞬発的な反発の鋭さを追い求めるのであれば、さらに高額なヒルクライム特化型タイヤという選択肢もあります。しかし、だからといってAGXEROが重くて遅いタイヤかと言われれば全くそんなことはありません。FASTと比べても極端な差は感じられず、デメリットとして指摘するほどの弱点とは言えませんでした。
強いて好みが分かれる点を挙げるなら、細身のタイヤ特化のソリッドな反応性や飛び抜けた軽快感を好む方にとっては、この分厚いコンパウンドの「しっとりとした手応え」が合わない可能性はあります。ただ、その手応えを上回る走りの安心感と軽快さを受け取ることができました。
耐パンク性能については、まだ書けない
耐久性や耐パンク性能については、今回の100kmテストの間でパンクが起きなかったため、まだ明確なことは書けません。スペック上はAGILEST比で耐貫通パンク強度が6%以上向上しているとのことですので、長期的な運用での耐久性には期待しています。この部分は、もう少し走りを重ねてから、改めて書きます。
「内幅25mmリムへの30C装着」という組み合わせに一度は妥協し、あきらめかけていた私にとって、それがAGXERO TLRによって理想的な形で成立したこと。これが今回のテストで得られた一番大きな収穫でした。
ここからさらに走行距離を伸ばし、耐久性や耐パンク性についても継続して経過を見ていきたいと思います。まずはこのセットアップのまま、じっくりと距離を重ねていきます。
【Jam cycle 機材インフォメーション】
タイヤの銘柄選び、リム内幅との組み合わせ、最適な空気圧の調整について、店舗にてご相談を承っております。
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※ 本記事のインプレッションは私個人の体感に基づくものであり、ライダーの体重・走行環境・セットアップにより印象は異なります。
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