「 PARTICLE 徹底解剖 Vol.2 」3シリーズ × 4グレードの 読み解き方
PARTICLE
3シリーズ × 4グレードの
読み解き方
前回 Vol.1 では、「『何が良いか』から『誰に合うか』へ」── 私自身の中華カーボンに対する向き合い方が、ここ数年で変わってきたという話を書きました。
その続きとして、今回は PARTICLE のラインナップ全体を「処方の道具」として眺めていこうと思います。
ただ、最初に正直に書いておきます。ラインナップの中から、最終的にどのモデルがどのお客様に最も合うのか ── 私自身も検証してる段階です。Vol.3 以降の実機検証を経た上で、連載の終盤で改めて整理していこうと思います。
今回はその前段として、シリーズとグレードを分けている軸が何なのか、その軸はどう使えるのか ── そこを丁寧に見ていきます。
ラインナップ全体の地図
まずは PARTICLE のラインナップを俯瞰してみます。
PARTICLE のロード/グラベル系ホイールは、3つのシリーズ × 4つのグレードという格子構造で展開されています。
| シリーズ | 内幅 | 用途 | 展開グレード |
|---|---|---|---|
| RCX | 21mm | ロード(ディスク) | Hyperlight / Ultralight / Light / Team |
| GCX | 25mm | ロード兼グラベル(ディスク) | Hyperlight / Ultralight / Light / Team |
| CCX | 21mm | リムブレーキ専用 | Ultralight のみ |
シリーズで分かれているのは リム内幅とブレーキ規格、グレードで分かれているのは 素材・スポーク世代・ハブ・重量制限 ── ざっくり言うとこの2軸の格子です。
CCX については、現代のロード市場がほぼディスクブレーキ一色になったなかで、あえてリムブレーキ用を1グレード残してくれているということに、ブランドの誠意を感じます。今もリムブレーキ機を大事に乗り続けている方にとって、新しい選択肢が一つあるという事実は、それだけで価値のあることではないでしょうか。本記事では CCX については以後割愛し、RCX と GCX の読み解きに集中していきます。
RCX(21mm)と GCX(25mm)── 内幅の選び方
RCX と GCX の最大の違いは リム内幅 ── ここに尽きます。
RCX は内幅 21mm。これは数年前までのロード用として、ある種スタンダードだった寸法です。タイヤを細く運用したい人、特に ヒルクライム専用として 25C や 26C を今でも使いたいと考えている人 にとっては、RCX のほうが素直に合うように感じます。
GCX は内幅 25mm。グラベルの 30C 以上を主用途として設計されていますが、メーカー自身が「現代のロードレースでも 30C 以上が標準になりつつある」と説明しているとおり、ロード用途としても十分ターゲットに含まれている リムです。
── 私個人としては、内幅は 25mm のワイドリムのほうがいい と考えています。タイヤと路面のグリップ、コーナリング時の安定感、空気圧を低めに運用したときの乗り心地 ── これらを総合すると、25mm 内幅が現代の標準解として理にかなっているように感じます。
ただ、内幅 25mm に抵抗があるから 21mm を選ぶ、という側面も現場ではあります。「ワイドリムは重い印象」「太いタイヤはレース機材ぽくない」── そういう感覚を持っている方は依然として一定数いて、その層には RCX が答えになります。
GCX(内幅 25mm)の推奨タイヤ幅は、メーカー公式では 29mm 以上 とアナウンスされています。一方で、私自身は GCX で 28mm を運用しています。
GCX/RCX シリーズはすべてフックドリムで、8LIEN AETHER をはじめとする他のフックドリム機材でも 28mm からの運用は問題ないとされていることから、私としては実用上は十分許容範囲だと判断しています。ただし、メーカー公式の推奨幅から外れる運用にはなりますので、その点はご自身の判断でお願いします。
なぜ Hyperlight がハイエンドなのか
4つのグレードのなかで、Hyperlight は明確に最上位の位置づけです。価格も $1,999 と頭一つ抜けています。
このグレードがなぜハイエンドなのか ── スペックを追っていくと、3つの特徴が見えてきます。
通常、ホイールは軽量化すると剛性が落ちる。でも Hyperlight は Light シリーズより横剛性が高く、剛性最優先の Team シリーズに迫る数値を出していると公表されています。これは「軽くて柔らかい」でも「重くて硬い」でもなく、軽くて硬いを両立させた、という主張です。
通常のカーボンより高弾性な「より特殊なカーボンファイバー(more exotic carbon fibers)」を使用していると説明されています。素材コストが高くなる代わりに、軽量と剛性の両立を可能にしている、というロジックです。
Hyperlight はスポーク = 第4世代固定、ハブ = SR1 専用、と 選択肢を絞っているのが特徴です。「選べないことが性能の保証」という考え方だと理解しています。Ultralight や Light が複数の組み合わせから選べるのとは対照的です。
Hyperlight が明確にハイエンドである理由は、この3点に集約されると私は考えています。
とはいえ ── これらはあくまでスペック上の主張です。実走でこのトレードオフ突破がどう感じられるのか ── その答えは、Vol.3 で GCX Hyperlight 52mm を実走検証する回で、私自身の体感として書いていきます。
第3世代と第4世代カーボンスポーク ── 風潮と実態
PARTICLE の Ultralight と Light シリーズでは、第3世代(GEN3)と第4世代(GEN4)のカーボンスポークから選べるようになっています。Hyperlight は GEN4 固定、Team は GEN3 が標準です。
でも実際は、GEN4 にも色々な特徴があり、すべてが同じわけではありません。たとえば、ある中華ブランドが採用している GEN4 スポークは、私の好みではありませんでした。いい意味でも悪い意味でも、特徴の薄い乗り味で。一方で、8LIEN AETHER に採用されている 8LIEN オリジナルの GEN4 はすごく良かった。同じ「GEN4」と呼ばれていても、ブランドによって設計思想がかなり違います。
そして、世代が進めばすべての面で改善する、というわけでもありません。私の体感としては ── GEN4 は GEN3 より横剛性が落ちる印象 があります。
この横剛性の差をサイクリストが体感できるかどうかは、難しいところですが。ダンシングを多用する人や漕ぎだしの力強さを求める人は GEN3 を好む傾向 があるようにおもいます。一方で、シッティングでの路面からの突き上げは、どのブランドでも GEN4 のほうがマイルド ── これは間違いなく言えます。
Hyperlight を少し転がしてみた段階でも、路面の突き上げがすごくマイルドになっていて、「すぐに、あぁ GEN4 のスポークだな」と感じました。
ケイデンスとしなり ── スポーク選びの物理
では、GEN3 と GEN4 のどちらを選ぶべきか ── ここを考えるためには、「軽量」「硬さ」「しなやかさ」が踏み込みのフィーリングとどう関係するのか をいったん整理する必要があります。
これは私が長年現場で感じてきた、ペダリングと機材の関係です。
軽い = 慣性が働かない = ずっと力を伝え続ける必要がある。
硬い = 反発が高い = ペダリングスピードがいる = ケイデンスの高さが必要。
そして、ここからが難しいところです。硬いものは、反発を生むくらいしならせることができれば、その反発力を得ることができます。でも、しならせることができないと、硬い = 重い、という感覚になります(踏んだ感覚として)。
逆に、しなやかなものは、しならせる力は少なくて済みますが、得られる反発も少なくなります。そのかわり、反発するリズムに合わせやすいので、ケイデンスの幅を生むことができます。
でもしなやかなものは、しなって反発する以上に力を加えると ── 反発して戻ろうとする前にペダリングの入力ポイントが終わってしまうと、これもまた反発力を得ることができません。ずっとしなっているものを漕いでいるような状態になってしまうので、ペダリングフィールとしては重く感じる。これはこれで、どことなく硬いものを踏んでいるのと似た感覚になります。
つまり、機材の硬さやしなやかさには 「自分の脚と合うリズム」のスイートスポット があります。それは絶対値ではなく、乗り手と機材の組み合わせで決まるもの です。
この前提をふまえて ── PARTICLE のラインナップに戻ります。
Ultralight と Light ── 4つの組み合わせの読み解き
Ultralight(超軽量・100kg制限)と Light(120kg制限・耐荷重高め)── このどちらを選ぶか、さらに GEN3 か GEN4 のスポークを選ぶか。4つの組み合わせ が現場で一番悩ましい選択肢になります。
ここで重要になるのが、リムの重量差 です。Ultralight のリムと Light のリムでは重量に差があり、Ultralight のほうがより軽量に振られた素材構成になっています。
この「リム重量の差」と「スポークの硬さ・しなやかさ」が組み合わさることで、ケイデンスのスイートスポットの幅と位置 が決まってきます。私なりの読み解きを書いてみます。
Ultralight の軽いリムに、GEN3 の高剛性で硬いスポーク。この組み合わせは、ケイデンスのスイートスポットがかなり狭くなる 印象です。イメージ的には、本当にヒルクライマーで、かつ体重も軽量で、ケイデンスを高く保つことができる人 ── そういう走り方のなかでこそ、この組み合わせは武器になります。
同じ Ultralight でも、GEN4 にすることでスイートスポットの幅が少し広がります。ヒルクライム主体だけれど、もう少し走り方の幅を持たせたい人にはこちらが合うように感じます。
Light のリムに GEN4 のしなやかなスポーク。この組み合わせは、今風の乗り味で、万能に近いと言えます。上りも下りも、平坦も、風がある日も ── オールラウンドに走るなら、ここがバランスの良い選択肢になります。
GEN3 のスポークは、横剛性が高く反発が強いので、ダンシングやダッシュをしっかり繰り出したい人 に向いています。シッティングがメインの方は GEN4 を、立ち漕ぎを多用する方は GEN3 を ── そういう住み分けで考えてもいいのではないでしょうか。
ここで一つ注釈を加えておくと ── Ultralight GEN3 はオールラウンドに使うには、すごく使いにくいように感じています。軽量過ぎて、ペダリングが難しいのです。ヒルクライムをメインに使うのであれば武器になりますが、上りも下りも平坦も風がある日も走るとなると、Light でも(あるいは Light のほうが)合う場面が多いと、私は感じています。
これは「Light は廉価版で性能が劣る」という話ではなく、用途が違う という話です。Vol.1 で書いた「『何が良いか』から『誰に合うか』へ」── その視点が、ここで具体的に立ち上がってきます。
Team ── カーボンスポーク機材への移行ステップとして
Team シリーズは $999 と、PARTICLE のなかで最も手の届きやすい価格帯です。一見すると「廉価版」に見えるかもしれませんが、私の見方は少し違います。
Team は、完成車に付属していた初期のホイールから、カーボンスポークの現代のホイールへ移行したい人 に向けたグレード ── そう位置づけるのが自然だと感じています。
$1,999 のハイエンドにいきなり手を伸ばすのではなく、まずカーボンスポーク機材というものを自分の脚で経験してみたい ── そういう方にとって、Team は 技術的にも価格的にも、最初の一本としてのハードルがかなり低い です。
コスト面をまず考えるとなると、超軽量の素材を使うことはできず、その結果、リムの素材には厚みが出ます。これがそのまま 体重制限の幅(140kgまで) につながっています。設計思想としては至ってシンプルだと思います。
Particle の Team シリーズが 140kg というシステム重量制限を持つ背景には、世界市場を相手にしているという事情もあると感じています。日本人ホビーライダーの平均的な体格と、北米やヨーロッパの体格には、それなりの差があります。海外メーカーが「ホビー入門グレードに余裕のある重量制限を持たせる」のは、自然な設計判断ではないでしょうか。
もう一つ ── 私の経験上、ロードに本格的にハマっていくほど、体型は自然と引き締まっていくものでもあります。だからこそ、入門時の「余裕のある一本」と、走り込んだ後の「絞り込まれた一本」では、選ぶべきホイールが変わってくる。それはむしろ自然なライダーの成長の証のように、私には感じられます。
Team を選ぶことは、「これからカーボンスポーク機材と長く付き合っていくための入口」 として、十分に意味のある選択だと考えています。
同時に、Team について「コストをどこで削減しているのか」「素材選定の具体的な違いは何なのか」── ここはもう少し詳しく知りたい部分でもあり、機会があれば PARTICLE に訊ねてみたいです。
処方の手順は、実機検証の後に
ここまで、PARTICLE のシリーズとグレードを分けている軸について、私なりの読み解きを書いてきました。
ただ、本文の冒頭でも書いたとおり ── 「目の前のお客様一人に対して、12通り(実際は11通り)のラインナップから1本を絞り込む手順」が、私も整理するのは難しいです。そのため実機を自分の脚で検証してから書くべきことだと考えています。
幸い、Hyperlight の実走はすでに始まっています。Vol.3 では GCX Hyperlight 52mm を主役に、1000g を切ったホイールの実際の挙動を検証していきます。Vol.4 では RCX Ultralight 50mm を取り上げ、内幅 21mm という保守判断が現代のロード機材としてどう機能するのかを見ていきます。
そして連載の終盤で ── 処方の手順、つまり「何を順番にチェックして、お客様一本を絞り込んでいくのか」を、実機検証の手応えと合わせて、改めて整理するつもりです。
Vol.2 はその下準備の地図です。地図だけでは目的地には辿り着けません。これからの実走と検証の中で、地図の読み方も少しずつ変わっていくのかもしれません。
引き続き、よろしくお願いします ──
【Jam cycle 機材インフォメーション】
PARTICLE をはじめとする中華カーボンホイールについて、ご相談を承っております。脚質や用途に合わせた機材選定、お気軽にお問合せご相談ください。
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