【8LIEN AETHER 5 徹底解説 Vol.3】実走インプレッション
8LIEN AETHER 5
実走インプレッション
── 1040gの「速さ」と「代償」を、身体で検証する
サイクリングロードから峠やコーナーまで。超軽量ホイールのリアルを率直に語ります
Vol.1ではAETHER 5のリム素材工学と空力設計を、Vol.2では8LIENオリジナルGen4スポークの設計意図を検証してきました。
最終回となるVol.3では、私自身がAETHER 5を実際に履き、サイクリングロードでの60〜80kmの巡航、ダッシュ系メニュー、5分程度の起伏、10〜13分の峠と、さまざまなシチュエーションで走り込んで感じたことを、率直にお伝えします。
Vol.1で解説した「T1100GとM40Xの局所積層」によるリムの超軽量化。Vol.2で掘り下げた「厚み1.2mmの8LIENオリジナルGen4スポーク」の設計意図。それらのテクノロジーが実際の走りにどう表れるのか ── 結論を先に言えば、このホイールは「速い」です。ただし、その速さには独特の文法がある、というのが正直な印象です。
リムハイト:F45mm / R50mm
リム内幅 / 外幅:25mm / 34mm
スポーク:8LIENオリジナル Gen4カーボン(厚み1.2mm)
テスト時体重:約80kg / タイヤ空気圧:4.2〜4.3bar
テストは、サイクリングロードでの60〜80kmの巡航を数回、ダッシュ系のメニューを数日、5分程度の起伏のあるコース、そして10〜13分程度の峠を含むハイスピードなコースで実施しました。平坦から山岳まで、できるだけ多角的にこのホイールの性格を確認しています。
マイルドで一瞬タメのある脚当たり。
しかし0〜33km/hへの到達は異常に速い
乗った瞬間、驚きました。初速が非常に軽快です。
しかし、前作L5Wのようなダイレクトな漕ぎ出しによる軽快さとは、その質が異なるように感じました。とてもマイルドで、一瞬タメのある脚当たりが特徴的でした。ガツンと反応が返ってくるのではなく、ほんの一拍だけスポークが力を吸収してから返してくるような感覚です。Vol.2で検証した「厚み1.2mm」の特性 ── つまりVONOAの0.9mmよりもあえて厚くすることで「芯のある剛性感」を残すという設計意図が、まさにこの脚当たりとして表れているのではないかと思います。
0〜33km/hあたりまでは、ひっかかりもなくスムーズかつ非常に速くこの速度域に到達します。1040gの超軽量が効いているのだと思います。ペダリングに対する反応も自然で、脚へのストレスが少ない。この速度域では文句のつけようがない、というのが率直な感想です。
慣性が効かない。
しかしスポークが「負けない」という新感覚
しかし、33〜36、37、38km/hあたりの速度域で、今までにない感覚に出会いました。
1040gと超軽量であるがゆえに、慣性が働かず空気の壁のようなものを感じ始めます。少し足が重く感じる瞬間がありました。重いリムがゴロゴロと回転して速度を維持してくれる ── あの感覚がないのです。
ただし、その感覚にも徐々に慣れてきて、速度が落ちるという印象はありませんでした。最初の1〜2本のインターバルでは戸惑いましたが、サイクリングロードでの60〜80kmの巡航を数回重ねるうちに、身体がこのホイールの「回し方」を覚えていくような感覚がありました。
走り込んでいくうちに、私はある感覚に気づきました。重量のあるリムが慣性で回っていくのではなく、軽量なリムを高反発のスポークが回している ── そういう推進の仕方をしているように感じたのです。踏み込んでもスポークが負けてしまわずに、ピュンピュンピュンと反発して推進力に変換している。Vol.2で検証した「厚み1.2mmの8LIENオリジナルGen4スポーク」の特性が、この速度域で顕著に表れていると感じます。
ダンシングの軽快さ、リズムの取りやすさ。
超軽量の恩恵を最も感じる場面
登坂はすごく気持ちいいです。率直に言って、今回のテストで最も感動した場面が登りでした。
ダンシングも軽快ですし、リズムも取りやすい。5分程度の起伏でも、10〜13分の峠でも、超軽量ホイールの恩恵とスポークの反発力を存分に感じることができると思います。とくにダッシュ系のメニューを入れた際に、踏んだ分だけ素直に加速してくれる感覚が心地よく、勾配が上がってもペダリングのリズムが乱れにくいと感じました。
平坦の高速域で感じた「慣性のなさ」がここでは逆に武器になります。軽いリムが加速のたびに素早く反応し、勾配の変化にもリニアに追従してくれる。登りに関しては、AETHER 5の設計思想が最もダイレクトに体感できる場面だと感じました。
4.2〜4.3barでも不快な振動がない。
前作L5Wからの大きな進化
乗り心地に関しては非常に良いと感じています。
前作のL5Wでは空気圧を4.0barに設定していましたが、3.8barが乗りやすく、しかしタイヤが必要以上につぶれる感覚もあり、空気圧設定でかなり印象が変わりました。
AETHER 5では、4.2bar、4.3barくらい入れても振動に関する不快さがありませんでした(体重は約80kg)。高めの空気圧を入れられるということは、転がり抵抗を最適化しやすいということでもあります。
これはGen4スポークのしなやかさが影響しているのではないかと考えています。Vol.2で検証した通り、8LIENオリジナルGen4スポークはVONOAの0.9mmに対して1.2mmの厚みを持たせ、「芯のある剛性」と「適度なしなやかさ」を両立させています。リム剛性は高いまま、スポークが微振動を吸収してくれる ── その設計意図が、空気圧の許容幅の広さとして体感できたように感じます。
超軽量であることの「代償」を正直にお伝えします
ここからは、気になった点を正直に書きます。
1040gという超軽量ゆえだと思いますが、少しクイックなハンドリングの印象がありました。リムの慣性が働かないため直進安定性は少し失われていると感じます。コーナーもジャイロ効果が効きにくいからでしょうか、ハンドルを自分で抑えておかないといけないような感覚がありました。ただし、ある程度の距離を乗っていくうちに慣れてきたので、そこまで気にする必要はないのかなとも思います。
横風と向かい風に関しては影響があります。特に横風。一瞬吹き抜けるような風の時はさすがにハンドルを取られます。向かい風においても、軽量なので当然ゴロゴロと回っていく感覚はなく、自分で漕いでいかなければいけない。この点は軽量ゆえのトレードオフと言えるのではないでしょうか。
1040gの超軽量は、登坂と加速において圧倒的な武器になります。しかし、それと引き換えに「慣性による安定感」は薄れる。これは物理的に避けられない事実であり、AETHER 5に限った話ではなく、このクラスの超軽量ホイールすべてに共通するトレードオフだと考えています。大切なのは、このトレードオフを理解した上で、自分の走り方やフィールドに合っているかどうかを判断することではないでしょうか。
個人的には、コーナリングのクイックさは数回のライドで慣れましたし、横風についても事前に意識しておけば対処できる範囲だと感じています。これらの点を「欠点」と呼ぶべきか、それとも超軽量を選んだ時点で受け入れるべき「特性」と捉えるか ── 私は後者だと考えています。
Vol.1からVol.3まで、8LIEN AETHER 5を素材工学、スポーク設計、そして実走インプレッションの3つの視点から検証してきました。
このホイールの本質は「軽さで回す」のではなく、「軽さ×スポークの反発力で推進する」というところにあると感じています。1040gという数字だけを見て判断するのではなく、その重量を支えるGen4スポークの「意図された厚み1.2mm」の存在を知ったうえで乗ると、このホイールの走りがより深く理解できるのではないかと思います。
速い。ただし、その速さには独特の文法がある。その文法を理解した上で乗りこなせば ── AETHER 5は間違いなく、現時点で最も魅力的な超軽量ホイールの一つだと感じています。
登坂や加速を重視するライダー、起伏の多いコースを好むライダーにとっては、おそらくこれ以上ない武器になるのではないでしょうか。一方で、平坦基調の高速巡航や強風下でのロングライドがメインの方は、慣性の少なさに最初は戸惑うかもしれません。しかしそれも「慣れ」の範疇であると、数回のテストライドを通じて感じています。
1040gという数字が持つ意味は、乗ってみて初めて分かる。机上のスペックでは伝えきれない「速さの手触り」を、ぜひご自身の脚で確かめていただきたいと思います。
8LIEN AETHER 5をはじめ、店舗にて試乗予約・ご相談を承っております。
データだけでは語れない「生きた機材の感覚」を、ぜひご自身の脚でご体感ください。
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