「PARTICLE 徹底解剖 Vol.1」「何が良いか」から「誰に合うか」へ

PARTICLE Deep Dive ― Vol.1 / 5

PARTICLE 徹底解剖
「何が良いか」から「誰に合うか」へ



 ─ 連載開始にあたって、私がいま考えていること


2025年の秋頃から、ある問いがずっと頭の中にありました。

「これだけ多くの中華カーボンホイールブランドが市場に出てきたなかで、これからユーザーに何を提供できるのか。自分には何ができるのか」── その問いに対する自分なりの答えが、ようやく見え始めたところです。

これから5回にわたって、PARTICLE という新興ブランドを軸にしながら、「中華カーボンの次のフェーズ」について書いていこうと思います。

微差の時代に、何を語るのか


CRW、8LIEN、GOOSYNN、NEPEST、YOELEO ─ 名前を挙げ始めるとキリがありません。各ブランドが軽量カーボンホイールを出し、カーボンスポークを採用し、ベアリングがスチールかセラミックか、リムハイトが少し違う、重量が少し違う ── そういう微差で勝負する時代になりました。

色々と使ってみて、それぞれに良さがあり、悪いものは本当に少ない。けれど、各ブランドの差も、モデルの差も、本当に小さい。同時に、ヨーロッパの高級ブランドのような圧倒的な「すごみ」も、まだ少ない。

そんな状況の中で、私は何にどのように関わっていくべきか

これが、2025年の秋から私の中で育っていた違和感の正体だったと、いま振り返って思います。

終わりつつある「検証の時代」


数年前まで、中華カーボンを語る焦点は明確でした。「本当に使えるのか?品質はどうなんだ?」 ── ここに尽きていました。

私自身、その視点で各ブランドを取り上げてきました。各ブランド・各モデルの品質を一台ずつ確認していく作業に、確かな価値があった時代です。「このブランドは大丈夫だ」「このホイールはよく走る」 ── 実走を通じて、その判断を一つずつ積み上げていくことが、ホビーレーサーやチームの選手にとっての羅針盤になっていました。

けれど、その時代は終わりつつあると感じています。

今は、本当にどのブランドのどのモデルも、一定以上の品質を持っている。粗悪品はほとんど見当たりません。10万円を切る価格帯のホイールも増えてきて、そのあたりの品質には依然として賛否が分かれるところですが、それなりの価格帯の中華カーボンに関して言えば、「使えるかどうか」を判定すること自体が、もはや本質的な問いではなくなりつつあります

差が小さくなりすぎて、「どれが良いか」では選べない時代に入った ── これが、長年中華ブランドを見てきた現場の率直な実感です。

「処方する」というポジションへの移行


機材の良し悪しは、もはや絶対値では決まらないと考えています。

硬い乗り味には硬い乗り味の良さがあり、しなやかな乗り味にはしなやかな乗り味の良さがある。どちらが優れているかではなく、誰の脚に・どの目的に・どの体に合うかの話に変わってきている ── これが、ここ数年で私の中ではっきりしてきた感覚です。

私が次に取り組むべきは、品質の検証ではなく ── 乗り手に合うものを処方することではないか。

CORE INSIGHT

「このブランドは使える / 使えない」を判定する時代から、「このライダーには、このブランドのこのモデルが合う」を処方する時代へ。中華カーボンの議論の軸は、いま静かに移り変わろうとしている。

ロードに乗り始めて20年あまり、21歳でこの業界に身を置いて以来ずっと現場に立ってきました。2017年に Jam cycle と Team hsj をスタートさせて以来、選手の指導と、お客様一人ひとりの脚に向き合いながらの機材選定 ── その現場の蓄積を、これからは「機材を選ぶ」ためではなく「機材を処方する」ために使う。そういう次のフェーズに、自分自身が踏み込んでいくべきタイミングなのではないかと感じています。

オリジナルホイールへの挑戦


その方向性が見え始めた時、最初に頭に浮かんだのは「中華OEMを使って、自分のブランドのオリジナルホイールを組む」というアイデアでした。

理想の処方箋を、自分のブランドとして形にする ── 

ただ、形にしていくのは、想像以上に簡単ではありませんでした。

OEMにおいてハブの選定はそれほど難しくはありません。難しくないというと語弊があり実際は、良いハブの種類はそれほど多くない、そのためハブの種類やスポークの配置には、大きな迷いはありませんでした。問題は、スポークの種類とリムハイト ── この二つの組み合わせの調整でした。

カーボンスポークは世代によって、また太さや本数によって、まったく違う乗り味を生みます。それをどのリムハイトと組み合わせるかで、ホイール全体のキャラクターが決まる。「このリムにはこのスポーク」というベストマッチを、複数のリムハイトに対して納得いくまで詰めていく作業 ── これが想像以上に重く、サンプルを作って一台ずつ検証していく道筋を、その時の私は見いだせませんでした。

オリジナルホイールの構想は、いったん棚の上に置くことになりました。

PARTICLE という、整然としたラインナップとの出会い


そんな時に目に留まったのが、PARTICLE というブランドのラインナップの体系性でした。

PARTICLE は、3シリーズ(RCX/GCX/CCX)× 4グレード(Hyperlight/Ultralight/Light/Team)という、極めて整理された格子構造でラインナップを展開しています。

私が惹かれたのは、個別のモデルの仕様ではなく、「ラインナップ全体を一つの処方箋ツールとして使える」可能性でした。

PARTICLE という発見

たとえば、軽さを最優先するヒルクライマー、クリテリウムを走るレーサー、ロングライド志向のホビーライダー ── それぞれの脚質と目的に対して、PARTICLE のラインナップの中から異なるモデルを処方できる。スペックの違いだけでなく、設計思想の違いも明確に分かれている。

これは、私が頓挫したオリジナルホイール構想で実現したかったことに、限りなく近い。

そう感じたところから、私は PARTICLE に直接コンタクトを取ることにしました。

日本展開の始まりと、対話のスタート


メールを送ったのは、振り返ってみると間の良いタイミングでした。

PARTICLE は2026年の春から、本格的に日本展開を始めたばかりで、日本事業開発マネージャーが着任した直後でした。

これは私にとっても、PARTICLE 日本展開にとっても、極めて初期段階の対話です。今後、Jam cycle としてどのように関わっていくかは、これからの連載の中で、適切なタイミングで適宜お伝えしていきたいと考えています。

まだ、答えは持っていない


正直に書こうと思います。

この記事の前半で、私は「乗り手に合うものを処方できるショップでありたい」と書きました。けれど、PARTICLE のどのモデルが、どのタイプのライダーに合うのか ── それは私自身、まだまとまっていません

それが、私にとってのこれからの最大の課題でもあります。

だからこの連載は、「答えを発表する」ものではなく、「答えを探していく」記録になります。

Vol. テーマ
Vol.2 3シリーズ × 4グレードの読み解き方 ── ラインナップ全体の地図
Vol.3 GCX Hyperlight 52mm ── 1000g切り × 25mm内幅 × 52mm深という孤高のニッチ
Vol.4 RCX Ultralight 50mm ── 21mm内幅という保守判断の現代的妥当性
Vol.5 「Return of the Hook」と内幅トレンド ── 連載を業界文脈に位置づける

その過程で、「『何が良いか』から『誰に合うか』へ」── 

数年前、私が中華カーボンを「使えるかどうか」で検証していた時代を、いまは過去形で語れるようになりました ── 

PARTICLE をより理解するために、既存の中国ブランドをより理解していくために、進めていこうと思います。


【Jam cycle 機材インフォメーション】

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