「 PARTICLE Deep Vol.3 」「軽量ディープエアロ」 という新ジャンル

PARTICLE Deep Dive ― Vol.3 / 5

「軽量ディープエアロ」
という新ジャンル




PARTICLE GCX Hyperlight 52mm ─ 3日間の検証で見えたもの

Vol.1 で「『何が良いか』から『誰に合うか』へ」── 連載のスタンスを書きました。Vol.2 では PARTICLE のラインナップ全体を「処方の道具」として読み解いていきました。

そして Vol.3 ── 今回からいよいよ実機検証に入ります。主役は GCX Hyperlight 52mm。1000g を切るシステム重量と、52mm 深(実測 54mm)のディープリムを両立した、PARTICLE のフラッグシップです。

3日にわたって、合計 200km 以上を、登り・下り・平坦・横風・雨上がりの濡れ路面 ── あらゆる場面で走りました。最初に書いておくと、これは私が想像していたものとは違うホイールでした。3日かけてようやくその正体が見えてきた、というのが正直なところです。

テスト環境と機材スペック


まず今回の検証環境について、簡潔に整理しておきます。

TEST WHEEL

PARTICLE GCX Hyperlight 52mm
リム内幅:25mm / リム外幅:32mm / リムハイト公称:52mm(実測 54mm)
スポーク:第4世代カーボン(2.1g/本、SR1 ハブ)
クレーム重量:F+R 995g ±30g
手元実測:1080g(リムテープ込・バルブ抜き)
タイヤ:Panaracer AGILEST FAST TLR 28C(チューブレス)
空気圧:F 4.5bar / R 4.5bar

テストは京都・滋賀のいつもの練習コース。5分平均8%の登り、10分平均5%の峠、平坦基調 ── 計約 200km を3日に分けて走行しました。3日目の終盤は雨上がりの濡れ路面も含まれています。

最初の数キロで感じた「違和感」


ペダルを踏み出した瞬間、正直に書くと ── 少し裏切られた感覚がありました。

1000g を切る軽量ホイールで、第4世代のカーボンスポーク。手に持っただけで「ピュンピュンと反応よく軽快に回るホイールだろう」という先入観が、私の中にありました。事前にスペックを見ていれば、当然そう想像します。

ところが、実際に踏み出してみると ── 1080g の軽量さを、あまり感じない脚当たりでした。重い、ということではありません。けれど、想像していた「軽さゆえの俊敏さ」とは違う、もう少し腰のあるペダリングフィールがそこにあった。

スポークの印象としては、第3世代に近い第4世代と言いたくなる感触。Vol.2 で書いた「同じ GEN4 と呼ばれていても、ブランドによって設計思想がかなり違う」── その実感が、ここで具体的に立ち上がってきました。

このときの「ん?ん?」という違和感が、結果的に3日間の検証の出発点になりました。

登りで掴めなかった「リズム」


1日目・2日目の登りでは、私は Hyperlight のリズムを掴むことができませんでした。

5分8%の登りでも、10分5%の峠でも、漕いでも漕いでも、ホイールが脚にまとわりついてくる感覚があり、軽量クライミングホイールの「踏んだ瞬間にスコン!と抜ける」あの軽量ホイールの特有の脚当たりは感じませんでした。

急こう配はどうなのか、緩斜面ではどうなのか、峠のフィーリングがどうなのかというよりも ── このホイールの特性そのものを掴み損ねていた、というのが正確な表現かもしれません。

長い登りでも、短い登りでも、リズムが噛み合わない。Vol.2 で私は「Hyperlight は軽量と剛性のトレードオフを破った主張」と書きました。スペック上、それは正しいはずです。けれど実走では、スペックにある数値と実際のペダリングの感覚の差に戸惑う感覚がありました。

「ギアをかけて踏む」という処方


そんな中で、徐々に分かってきたことがあります。

Hyperlight は、回転型のクイックなペダリングよりも、少しギアをかけて踏むほうが相性が良い。これが2日目の途中で見えてきた感覚でした。

「回せない」というわけではありません。回せはするが、軽量ホイールのような「ケイデンスを上げて軽快に回す」走り方ではない、という感じです。少し重めのギアで、脚に伝わる負荷を感じながら踏み込んでいく。そのほうが、ホイールが素直に応えてくれる。

ただし、これには代償がありました。1日目・2日目はライド後半で脚が売り切れました。普段よりギアをかけて走っていたこと、リズムを掴めず無理に踏み込んでいたことも影響してるだろう、と振り返って思います。

3日目は短めのライドでしたが、この3日目に、もう一つ大きな気づきがありました。

エアロ性能 ── 軽量ホイールの常識を覆す


この3日間で一番驚いたのは、エアロ性能でした。

特に 横風への強さ。リムハイト公称52mm(実測54mm)のディープリムで、システム重量1000g台前半 ── このスペックで横風に強い、というのは正直に言えば予想外でした。

琵琶湖沿いを風速5m前後の横風のなかで走った際にも、前輪を取られる怖さを感じる瞬間はほとんどありませんでした。

これは私にとって新鮮な体験です。他の中華ブランド(1200g 台、1300g 台のホイール)でも、横風の影響を受けてしまう。1000g 台の Hyperlight が、これほど横風に対して安定していることには、正直驚かされました。
DT SWISS のようなリム断面を持つホイールのように横風を推進力変えるような印象はありませんでしたが、しかしこの重量で横風でハンドルがとられにくい、というは素晴らしいと思います。おかげで強風の琵琶湖沿いもストレスなく走ることが出来ました。

リム形状の恩恵

同じ Hyperlight でも Ultralight とはリム断面が違う ── つまり、軽量化のためだけにリム形状を妥協していない、ということです。

軽量ディープリムにありがちな「軽量ゆえに慣性が低く、横風が向かい風に変わる瞬間に風に押され一気に減速する」── そういう挙動も、Hyperlight には感じませんでした。リム形状の恩恵は確かにあると感じています。

そしてエアロは、横風の安定性だけではありません。超軽量にもかかわらず、トップスピードと巡航性能が高い。ここも特筆しておく必要があります。

3日目の発見 ──「軽量ディープエアロ」という認識


そして3日目に、ようやく Hyperlight の正体が見えてきました。

2日目から徐々に感じていたことが、3日目で確信に変わりました。これは「速いホイール」だ、ということです。

もう少し正確に書きます。Hyperlight は、乗り手の速度レンジを一段上に引き上げてしまうホイールなのではないか。1日目・2日目に感じた「きつい」は、ホイールが悪いのではなく、いつもより一段上の速度レンジに引き上げられていたからこその「きつさ」だったのかもしれません。

Core Insight

「楽できるけれど速度レンジが落ちてしまうホイール」というホイールも世の中にはあります。逆に、「乗り手を高い速度レンジに引き上げてくれるホイール」もあります。

Hyperlight は、間違いなく後者です。乗り手を一段上のレンジに連れていってくれる。だからこそ、最初は「重く感じる」「リズムが掴めない」と感じてしまう。

そう気づいた3日目、もう一度長い登りを走ってみました。

クイックなペダリングの意識を捨てて、淡々と、ディープリムを踏むような意識でペダリングすると ── 最初に抱いていた印象から、走りが大きく変わっていきました。素直に、登りでも前に進んでくれる。

ここで一つの認識が固まりました。Hyperlight は「軽量クライミングホイール」ではないということ。

「軽量ディープエアロ」という新しいジャンル

従来の60mmディープリムは、軽くても 1300g、多くは 1500g 前後が標準です。だからこそ、登りではディフェンシブに、耐えていく意識で走るのが普通でした。攻めるホイールではない、という認識です。

一方で、軽量クライミングホイールは登りで攻めるためのもの。代わりにエアロ性能や巡航性能は犠牲になる、というのが従来の常識でした。

Hyperlight は、この二項対立から外れています。1000g 台前半の軽さで、登りでも攻めていける。同時に、実測54mmディープリムによるエアロ性能で、平坦の高速巡航もこなす。脚がある人にとっては、登りでも攻めていけるホイール ── これは新しい選択肢だと感じます。

ただし誤解のないように書いておきますが、重量のあるディープリムが持つ「漕いだ慣性で進み続けてくれる」という性格は、Hyperlight にはありません。回転の維持には、軽量ホイール特有の「一定入力をずっと続ける」ペダリングが必要です。それでも、軽量ディープリム特有の「向かい風で一気に失速する」現象がないのは、リム形状の恩恵だと感じています。

これは、私のなかでは ── 「軽量ディープエアロ」という、今までになかった新しいジャンルとして位置づけたいと思います。実測54mm、前後合計1000g 台前半。55〜60mm のディープリムを相手にできるスペックを持ちながら、登りも攻められるホイール。

ハンドリングと、出荷時セッティングについての観察


3日目の終盤に雨上がりの濡れ路面を含むコースを走りましたが、雨でホイールが悪さをすることはありませんでした。ハンドリングは至ってニュートラル。これは安心して書けます。

ただし、いくつか気になった点もありますので、正直に書いておきます。

① 急勾配ダンシング時の後輪のヨレ

急勾配でダンシングを入れたとき、後輪に少しヨレる感覚がありました。スポークのテンションが少し低めなのかもしれません。

② 直進安定性の感覚

前輪も同様に、テンションがやや低めな印象。軽量ホイール特有の「慣性モーメントが低いことによる直進安定性の若干の低下」を感じる場面もありますが、他の1000g台のホイールに比べるとかなり少ないです。

とはいえ、これはどのブランドでも 1000g クラスのホイールになると、ある程度避けられない傾向です。そう考えると、Hyperlight はむしろ真っ直ぐ走る方に分類できると思います。

── 出荷時のスポークテンションは、リムが軽量がゆえに少し低めに設定されてる可能性があります。今度、スポークテンションを少し上げて使ってみようと考えています。これでハンドリングがどう変わるかは、別の機会に検証してみたいと思います。

このホイールは、誰に合うのか


3日間の検証を経て、私のなかで Hyperlight の輪郭がだいぶはっきりしてきました。Vol.2 で書いた処方マトリクスを、ここで一度更新しておきたいと思います。

Hyperlight が合う人

ケイデンスを上げて回すよりも、少しギアをかけて踏むタイプの脚質登りも攻めたいが、平坦も巡航で速く走りたい人。── 軽量ホイールの「クイックさ」ではなく「エアロホイール感がありながら登りも走らせたい」「速度レンジを一段上げてくれる感覚」を求めている人にとっては、これは武器になります。

Hyperlight が必ずしも合わない人

軽量ホイールにクイックな反応を期待する人ケイデンスを高く回し続けるタイプのペダリング登りメイン・短時間で結果を出したいヒルクライム特化型の人。── そういう用途では、おそらく Ultralight × GEN4 のほうが素直に合うのではないかと感じています。

これは Vol.2 の処方マトリクスの更新でもあります。Hyperlight は私のなかで「Ultralight × GEN4 の延長」ではなく、「全く別のカテゴリ」として位置づけ直すことになりました。

次回 ── 内幅 21mm の保守判断を検証する


Vol.3 では、3日 200km の走行で見えてきた Hyperlight の輪郭を書きました。最初に抱いた違和感が、3日目には「軽量ディープエアロ」という新しいカテゴリ認識へと変わっていく ── その過程を、できるだけ正直に記録したつもりです。

Vol.4 では、視点を切り替えて RCX Ultralight 50mm を取り上げます。内幅 25mm の GCX Hyperlight に対して、内幅 21mm の RCX Ultralight。Vol.2 で書いた「内幅 25mm のワイドリムのほうがいいと考えています」── その立場から見たとき、21mm 内幅という保守判断は現代のロード機材としてどう機能するのか。Hyperlight との対比のなかで、検証していきたいと思います。

引き続き、よろしくお願いします ──


【Jam cycle 機材インフォメーション】

PARTICLE GCX Hyperlight 52mm をはじめとする中華カーボンホイールについて、ご相談を承っております。脚質や用途に合わせた機材選定、お気軽にお問合せご相談ください。

■ オンラインショップ

→ Jam cycle ECサイト・スペックを見る

■ お問い合わせ・ご相談

・Instagram DM:@jam_cycle

・Mail:info@jamcycle.net

※ もちろん、店頭でのお声がけも大歓迎です。

※ 本記事のインプレッションは筆者個人の体感に基づくものであり、体重・走行環境・セッティングにより印象は異なります。

コメント

このブログの人気の投稿

【8LIEN AETHER 5 徹底解説 Vol.3】実走インプレッション

【8LIEN AETHER 5 徹底解説 Vol.1】 空力と極限軽量化

【8LIEN AETHER 5 徹底解説 Vol.2】8LIENオリジナル「GEN4スポーク」