「Craft Racing Works|クラフトワークス :Vol.1」

CRW Deep Dive ― Vol.1 / 3

Craft Racing Works(クラフトワークス)
── 調べていくうちに見えてきた「無名ホイール」の正体



ROVALやENVE ── ホイールを語るとき、多くのサイクリストの選択肢はこのあたりに収まるのではないでしょうか。

しかし最近、一部のホイール愛好家の間で静かに名前が広がっているブランドがあります。Craft Racing Works(クラフトワークス)。聞いたことがないという方も多いいかもしれません。

ペア重量1,250gでフロント50mm・リア60mm。空力テストではROVAL RAPIDE CLX IIとわずか1W差。価格は248,000円。数字だけ見ると、正直「本当なのだろうか」と感じてしまうレベルのスペックです。

私自身、最初は半信半疑でした。しかし調べていくうちに、このホイールの背景にある設計思想に強く惹かれるようになりました。全3回のシリーズで、私が調べたことをお伝えしていければと思います。

CRWとは何者なのか ── OEM出身のエンジニア集団


まず押さえておきたい事実があります。

CRWは中国・福建省廈門(アモイ)に本社を置くカーボンホイール専業メーカーです。法人名は「厦門鎧富特運動科技有限公司」、法人設立は2021年。しかし、ブランドの歴史は2021年からではないようです。

確認できた経緯をまとめると、こうなります。

2015年 ── OEMとして他社ブランドの高性能ホイール製造を開始。
2018年 ── 自社ブランド「CRW」を立ち上げ。
2020年 ── ハブの自社設計を開始。
2021年 ── 法人設立。

つまり、法人化する前から6年間、他社のホイールを作り続けていたことになります。開発チームの中核エンジニアは、台湾の世界最大手自転車ブランドで開発に携わっていた経歴を持つとされています。従業員は10名程度の少数精鋭体制とのことです。

SNS上では「中国の新興メーカー」という認識が広がっているように見受けられますが、OEM時代を含めれば10年近い製造実績を持つ、経験豊富な開発チームと考えるのが妥当ではないでしょうか。


「カーボンスポークのためにゼロから設計した」
── この言葉の真意を考える


CRWが掲げる開発コンセプトは明確です。「カーボンスポークを活かすために、ゼロから設計した」。

一見するとよくあるマーケティングコピーのようにも聞こえます。しかし、製品の構造を調べていくと、この言葉がただのコピーではないように感じられてきます。

「ゼロから設計」の具体的な意味

多くのカーボンスポークホイールは、既存設計のリムにカーボンスポークを「後付け」する形で構成されているようです。ハブも汎用品を流用するケースが多いと言われています。CRWのアプローチはこれと根本的に異なり、ハブの形状、スポークの固定方法、リムの層構成、そしてそれらの接合部まで、すべてをカーボンスポーク前提で新規設計しているとのことです。この点は構造を見ると確認できる事実のように思えます。

では、なぜ彼らはこのアプローチを選んだのか。その理由は、ハブとスポークの結合部分に隠されていると私は考えています。これについては第2回で詳しくお伝えします。

フラッグシップの中身 ── 数字で見ていきます


「CS5060HG」は、CRWのフラッグシップモデル「CS5060」のShimano HGフリーハブ仕様です。フリーハブはShimano HG / SRAM XDR / Campagnolo N3Wの3種類から選択可能となっています。

CS5060HG ─ 確認済みスペック
リムハイト:フロント 50mm / リア 60mm
ペア重量:1,250g ±2%(2026年モデル)
リム素材:東レ T700 / T800 カーボンファイバー
スポーク:特許取得カーボンファイバー(F16本 / R20本
ベアリング:TPI製セラミックハイブリッド × 6個
対応タイヤ幅:28〜45mm(2026年モデル)
日本国内価格:248,000円(税込)

この数字がどれほどのものか、比較してみるとよく分かります。

フロント50mm・リア60mmというエアロリムハイトで、ペア重量が1,250g。同クラスのリムハイトを持つ大手ブランドのホイールは、通常1,400〜1,500g台であることが多いようです。100〜250gほどの差があると考えられます。

ENVE SES、ROVAL CLXと同じ発想 ──
ただし、注目すべき数値があります


CS5060は前後で完全に異なるリムプロファイルを採用しています。ENVE SESシリーズやROVAL RAPIDE CLXと同じアプローチと言えるのではないでしょうか。

フロントリア(2026)
リムハイト50mm60mm
内幅25mm24mm
外幅34mm32mm
形状トロイダル・ワイドワイド化(2026改良)

ここで注目したい数値があります。フロント内幅25mmです。

ロードホイールの内幅として25mmはかなり異例のワイドさで、一般的なMTBトレイル用ホイールに匹敵するレベルです。なぜここまでワイドにしたのか。その理由は、ワイドタイヤとの組み合わせで空力特性を最大化するトロイダル形状の設計思想にあるのではないかと考えられます。CRWはこのワイドリムと外幅34mmの組み合わせで、横風安定性にも寄与する設計を意図しているようです。

ROVAL RAPIDE CLX IIとの差は1W ──
この数字をどう読み解くか


最も印象的なデータを確認してみましょう。

ROVAL RAPIDE CLX IIとの実走比較テストの結果が公開されています。

時速40km走行時:CRW CS5060 = 260W、ROVAL = 259W

差は1W。実験誤差の範囲内と考えられます。

リムプロファイルもROVAL RAPIDE CLX(フロント51mm / リア60mm)と近似しています。このデータが示唆しているのは、空力面での実力が、価格帯の大きく異なる最上位クラスに匹敵する可能性がある、ということではないでしょうか。

私が感じたこと

もしこの空力データが正確であれば、ホイール選びの前提そのものが変わってくるように思います。同等の空力性能を、より軽い重量で、大幅に低い価格で実現しているように見える。この「ありえなさ」の背景にある技術的根拠を、第2回で構造レベルから検証していきたいと思います。

2026年モデルで何が変わったのか


2024年の第1世代から2026年の第2世代にかけて、3つのアップグレードが確認できます。

重量削減

ペア重量 1,290g → 1,250g。約40gの削減です。50/60mmハイトのエアロホイールとしてはかなり驚異的な数値ではないかと感じています。

リアリムのワイド化

内幅 21mm → 24mm、外幅 28-29mm → 32mm。28C以上が標準となりつつある現代のロードシーンへの対応と考えられます。

ベアリングプリロード調整機構の追加

グラブスクリューでプリロードを調整可能に。スルーアクスルの締め加減によるベアリングへの悪影響を防ぎ、長期的な回転性能を維持する仕組みです。

地味に見えるかもしれませんが、③の追加は実用面で非常に大きいのではないかと思います。フレームメーカーごとにスルーアクスルの締め付けトルクが異なる現実を考えると、ユーザー側で調整できる意味は大きいように感じます。


第1回では、CRWの実態とCS5060HGの概要を見てきました。

調べれば調べるほど、「無名ブランド」という先入観とは裏腹に、設計思想は明確で、数字は一線級であることが確認できたように思います。ただし、本当に重要なのはここからではないかと感じています。

次回の第2回では、CRWの技術的核心に迫ります。リム、スポーク、ハブ ── 特にハブとスポークのネジロック結合機構。私はこの構造にこそ、CRWが他社と決定的に異なるアドバンテージが隠されていると考えています。

【Jamcycle 機材インフォメーション】

取り扱いホイールの試乗予約・ご相談を承っております。

データだけでは語れない「生きた機材の感覚」を、ぜひご自身の脚でご体感ください。

■ お問い合わせ・試乗予約

・Instagram DM:@jam_cycle

・Mail:info@jamcycle.net

※ もちろん、店頭でのお声がけも大歓迎です。

コメント

このブログの人気の投稿

【8LIEN AETHER 5 徹底解説 Vol.3】実走インプレッション

【8LIEN AETHER 5 徹底解説 Vol.1】 空力と極限軽量化

【 8LIEN 徹底解説 Vol.4】|L6W 実走インプレッション