【 8LIEN 徹底解説 Vol.2】|T800スポークが生む ダイレクトな走り
「カーボンの硬さ」の正体 ──
T1000リム × T800スポークが生む
ダイレクトな走りの設計思想
20H/20Hの1:1パターン、S&Sセラミック、R01ハブ。技術仕様を構造レベルで読み解きます
前回のVol.1では、8LIENが Jamcycle の取扱ブランドになるまでの経緯と、ラインナップ4モデルの位置づけをお伝えしました。
第2回となる今回は、このシリーズの核心 ── 4モデルに共通する技術仕様を、構造レベルで掘り下げていきます。
SNS投稿やインプレでよく耳にする「8LIENはカーボンの硬さが特徴」「踏んだ瞬間のダイレクトな反応」という表現。その感覚はどこから来ているのか。調べていくと、いくつかの明確な設計判断が見えてきました。
Ultra Toray T1000 ──
世界最高クラスの引張強度を持つ繊維
8LIENのLWシリーズ(L5W / F50R50 / F50R60 / L6W)は、4モデルすべてにおいてUltra Toray T1000カーボンファイバーをリム素材として採用しています。
T1000は、日本の東レが展開するカーボンファイバーの中でも、最上位に位置する繊維です。引張強度6,370 MPaという数値は、世界最高クラス。T700やT800と比較しても、明確に一段上のレイヤーに属する素材と言えます。
カーボンホイールの世界では、T700やT800が広く採用されているのが一般的です。T1000はその上のクラスであり、素材コストも跳ね上がります。8LIENがあえてT1000を選んでいるということは、「強度と軽量性の両立」を最優先にした設計判断があると考えられます。実際、T1000の高い引張強度があるからこそ、リムの肉厚を削っても必要な強度が確保できる ── そういう構造的な理屈が成立しているのだと思います。
スポーク穴周辺のみ
カーボンレイヤーを増やす
8LIENがT1000を活かす上で採用しているのが、「Reinforcement Layer-up」と呼ぶ独自の積層技術です。
具体的には、リムの内側で応力が集中するスポーク穴周辺のみ、カーボンの積層枚数を増やしています。リム全体を一律に厚くするのではなく、負荷がかかる部分だけをピンポイントで補強する ── この考え方によって、リム全体としては軽量化しつつ、強度と剛性を確保するという設計が成立しているのだと思います。
T1000という最高クラスの繊維と、局所的な積層補強。この2つの組み合わせが、8LIENホイールの「カーボンの硬さ」という走りの個性を生み出している根幹ではないかと感じています。
金型から取り出した状態が完成品 ──
工程そのものへの自信の表れ
8LIENのリムは、無塗装仕上げ(Coating Free)です。
一般的なカーボンリムは、金型から取り出した後に余分な樹脂を研磨し、クリアコートを吹き付けて表面を整えます。しかし8LIENは、金型から取り出した状態を最終仕上げとしています。硬化工程が完了した後、リム外層のカーボンには一切手を加えない ── 塗装がないということは、カーボンの成形精度そのものが問われるということです。
8LIENは社内品質管理として、以下の基準を全製品に適用しています。垂直剛性50kgf、横剛性20kgf(変形3.5mm)、垂直衝撃300kgf、スポーク穴強度300kgf、タイヤ装着試験150psiクリンチャー適合 ── これらすべてをクリアしたものだけが出荷されるそうです。
無塗装仕上げは、こうした品質管理があってこそ成立する選択だと思います。塗装で隠せるごまかしが一切効かないわけですから。
内幅25mm / 外幅34mm ──
現代のワイドタイヤトレンドへの完全対応
Vol.1で触れた通り、Jamcycleが取り扱う8LIENのLWシリーズは、内幅25mm / 外幅34mmのワイドリム仕様に統一されています。
これはZIPPが提唱した「105%ルール」── 最適なタイヤからリムへの気流遷移が生じるための外幅比率 ── にも適合する設計です。28c〜30cのタイヤ装着時、タイヤから外幅34mmのカーボンリムへとシームレスな翼型が形成され、気流の早期剥離が抑制されると言われています。
推奨タイヤ幅は28mm〜48mm。グラベルタイヤまでカバーする幅広い対応範囲です。
リム外幅:34mm
推奨タイヤ幅:28mm〜48mm
タイヤ形式:フック付き/クリンチャー&チューブレス対応
最大空気圧:クリンチャー125psi(8.6bar)/ チューブレス90psi(6.2bar)
幅4.5mm、20H/20Hの1:1パターン ──
剛性重視のスポーク設計
スポークはToray T800カーボンファイバーを用いた8LIEN独自の第3世代カーボンスポーク。幅4.5mmのエアロブレード形状です。
スポーク本数は、4モデルすべて共通で前後20H/20H、組み方は1:1パターン(左右均等)。ディスクブレーキホイールとしてはスタンダードな構成ですが、ここに8LIENらしい判断が見えます。
カーボンスポークは世代ごとに薄型化が進む傾向にあります。業界最先端のVONOA Gen4スポークは3.2mm幅、厚み0.9mmまで薄くなっています。一方、8LIENの第3世代スポークは幅4.5mm。明らかに厚みのある設計です。
これは「薄くできなかった」のではなく、「あえて厚くしている」と解釈するのが妥当だと思います。幅を広く取ることで、縦方向の剛性、そしてペダリングに対する反発力が高まる。踏んだ瞬間のダイレクトな反応というキャラクターは、このスポーク幅からも来ているのではないでしょうか。
なお、2026年初頭時点で業界に第4世代のカーボンスポークが登場し始めていますが、8LIENのLWシリーズは第3世代のまま。新世代スポークはAETHERシリーズ(新開発の8LIENオリジナルGen4)に切り分けて展開しており、LWシリーズは「剛性主体の走り」を維持する方向性を選んでいるように見えます。
36Tラチェットと、
台湾S&Sのセラミックベアリング
ハブは8LIENオリジナルのR01 Hub。ここにも注目すべき仕様が詰まっています。
DT Swissの特許切れ構造を採用した面接触ラチェット。10度ごとの噛み合いで、力の伝達効率が高い方式です。
S&Sはセラミックベアリング専業メーカー。セラミックボールとスチールレースの組み合わせで、低回転抵抗と耐久性を両立する仕様です。
主要コンポーネントすべてに対応。好みのドライブトレインに合わせて選択できます。
多くの箇所で工具不要の構造を採用。日常メンテナンスがしやすく、長期的な運用でも扱いやすいハブです。
54Tや72Tといったハイエンジェージメント仕様が流行る中、8LIENが36Tを選んでいる理由は、おそらく信頼性と耐久性を優先した判断だと思います。歯数が増えるほど構造は複雑化し、耐久性のトレードオフが生じます。36Tは面接触ラチェットの中でも実用性とバランスの取れた仕様であり、長期運用を見据えた堅実な選択ではないでしょうか。
4モデルの数値を並べて比較 ──
それぞれの位置づけが見えてきます
| モデル | フロント | リア | ペア重量 |
|---|---|---|---|
| L5W | 45mm | 50mm | 1,220g ±30g |
| LW: F50R50 | 50mm | 50mm | 約1,230g(実測) |
| LW: F50R60 | 50mm | 60mm | 1,250g ±30g |
| L6W | 60mm | 60mm | 1,290g ±30g |
注目したいのは、最もリムハイトの高いL6W(前後60mm)でも1,290g ±30gという数値です。他社の前後60mmディープホイールと比較すると、この重量はかなり軽量な部類に入ります。
ディープリムの多くが「速いけれど重い」という宿命を抱える中、8LIENのL6Wは軽量ディープという立ち位置を確保しているように思います。この重量感の違いが、実走でのハンドリング ── 特にダンシング時のバイクの振りやすさ ── に大きく影響していると感じます。
3年保証 + 生涯クラッシュリプレイスメント
8LIENは全ホイールに対して、以下のアフターサポートを提供しています。
3年間の製品保証:製造上の欠陥や材料不良をカバー
生涯クラッシュリプレイスメント:落車等による破損時、交換パーツを割引提供
60日以内の送料負担:製造不良の場合は8LIEN側で送料対応
Vol.1でお伝えした通り、中華ブランドに対する最大の不安は「トラブル時の対応」にあります。その不安に対する8LIENの回答が、この保証体制だと思います。Jamcycleとしても、この保証内容があるからこそ、安心してお客様にお勧めできるホイールだと感じています。
Vol.2では、LWシリーズ4モデルに共通する技術仕様を掘り下げてきました。
T1000カーボンリムと局所補強積層。無塗装が担保する成形精度。内幅25mm × 外幅34mmのワイドリム設計。幅4.5mmの第3世代T800カーボンスポーク(20H/20H、1:1パターン)。36TラチェットとS&Sセラミックベアリング。そして3年保証+生涯クラッシュリプレイスメント ── これらが、8LIENというブランドの「走りの根拠」を支えているように感じます。
8LIENの個性である「カーボンの硬さ」「ダイレクトな反応」は、高強度のT1000リムと、あえて幅を広く取った第3世代スポーク、そして堅実な36T選択などの積み重ねから生まれているのだと思います。
次回のVol.3からは、いよいよインプレッション編に入ります。まずはオールラウンダーのL5Wと、その姉妹機となるLW: F50R50 ── Jamcycleで扱う4モデルの中でも最も多くのライダーに届いてほしい2本について、実走での感覚を率直にお伝えしていきます。
8LIEN各モデル(L5W / LW:F50R50 / LW:F50R60 / L6W)、店舗にて試乗予約・ご相談を承っております。データだけでは語れない「生きた機材の感覚」を、ぜひご自身の脚でご体感ください。
・Instagram DM:@jam_cycle
・Mail:info@jamcycle.net
※ もちろん、店頭でのお声がけも大歓迎です。

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